2009年03月24日

子供と大人とその間


"Paddy Clark Ha Ha Ha"(Roddy Doyle著)は、先月カナダに行った時友達にもらった本。1960年代、アイルランドの小さな町に住む10歳の男の子の日常をその子の視点と言葉で書いたもの。特にこれといったプロットなし。主人公のPaddyが悪がきんちょ仲間といたずらに明け暮れる日々を時系列やらなにやら無視して、思いついたままに細切れエピソードで綴っていく感じ。でも、そんな同じように繰り返す毎日の中でも、彼が住むBarrytownの風景と同じように、彼もその周りも日々変化し成長していく。

この本はそんな子供の日常を面白おかしく描いただけでの本ではなくて、主人公の男の子のちょっと悲しい成長の物語でもあるわけ。中盤あたりから彼の両親の間になにやら不穏な空気が流れているのが、彼の視点を通して伝わってくる。階下でバタンと乱暴に閉められる扉の音や、リビングから漏れ聞こえる口論。10歳の彼は彼なりに理解しようとする。以下抜粋。

"Why didn't Da like Ma? She liked him; it was him that didn't like her. What was wrong with her? Nothing. She was lovely looking, thought it was hard to tell for sure. She made lovely dinners."

"There must have been a reason why he hated Ma. There must have been something wrong with her, at least one thing. I couldn't see it. I wanted to. I wanted to understand. I wanted to be on both sides. He was my Da."

読みながら胸がキュッとなる。結局お父さんは去っていく。大人の事情は分かんないし、この離婚(なのか別居なのか)によって彼の世界も大きく変わるが、Paddyは彼なりに折り合いをつけて前に進んでいく。切ないが逞しい子供のお話。

"Paddy Clark Ha Ha Ha" Roddy Doyle著 ↓

paddy.jpeg

“Paddy Clark Ha Ha Ha”とは一転。先日ジュンク堂で買った本。

“My Mistress’s Sparrow is Dead: Great Love Stories, from Chekhov to Munro” Jeffrey Eugenides編集 ↓

Mymistress.jpeg

Jeffrey Eugenidesの名前につられて手に取ったが、彼の著書ではなく彼が厳選したラブストーリー集。チェーホフ、フォークナー、ナバコフなんかの短編が収められている。チェーホフの“The Lady with the Dog(邦題:犬を連れた奥さん)”は初めて読んだが、十代や二十代で読んだとしたら絶対に「つまらない」で終わっていたと思う。理解できなかったはず。もちろん、今の私も話の時代設定や登場人物の社会的地位とはまるで無関係だけれど、話全体に流れる微妙な雰囲気や登場人物の感情の機微、二人の気持ちだけではどうにもならない事情みたいなのが分かる気がするし、それを味わう事ができる。年の功とやら?ところで邦題の「犬を連れた奥さん」はどうにかならないものなの?ネットで検索すると「子犬を連れた貴婦人」というのもあったが、そっちの方が良い。断然ね。

所で、このJeffrey Eugenides。ソフィア・コッポラが監督した映画“The Virgin Suicides(邦題:ヴァージン・スーサイズ)”の基になった本の“The Virgin Suicides(邦題:ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹)”を書いた人。その後に出た“Middlesex”もすごく良かったんだなぁ、これが。この人の本は注目している。

その映画のサウンドトラックに入っているAirの“Playground Love”がこれまた良い。気だるくて、十代の頃の危うい空気が漂う。映画の中でキルスティン・ダンスト演じるラックスの雰囲気にすごく合う。

"Playground Love" by Air ↓

playground.jpeg

今日の一曲: "We just won't be defeated" by The Go! Team
無条件に元気になれる曲。
posted by R-73 at 20:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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